子供が大切な場面で力を発揮できなかったとき、その悔しさや悲しみはとても深いものです。特に、ずっと努力を続けてきた目標に挑戦できなかったり、体調を崩して参加できなかった場合、その喪失感は計り知れません。
親として、そんな子供の姿を目の当たりにすると「どう寄り添えば良いのだろう」「どんな言葉をかけるべきか」と悩むこともあるでしょう。
今回は、落ち込んでいる子供の心に寄り添い、前向きな気持ちを取り戻すために親としてできることを、自身の経験を交えながらお話しします。
子供の気持ちを受け止める大切さ
まず、最も大切なのは「子供の気持ちを受け止めること」です。親の目から見れば「小さな失敗」に見えることでも、子供にとっては世界が崩れたような感覚になることがあります。
その感情を軽視せず、子供がどれほど傷ついているかを理解しようとする姿勢が、親として子供に寄り添う第一歩です。
私自身、思春期に経験した苦い出来事があります。
私は小学生から実業団まで柔道ひと筋の青春時代を過ごしました。大事な試合に向けて減量に取り組み、毎日稽古やトレーニングに励む日々。私が中学生の頃から目指したのは、全国優勝でした。
母は、私のために減量食を作ってくれたり、朝練のために始発に近い電車の毎日でも、必ず私よりも早く起きて見送ってくれました。帰宅が遅くても帰ったらすぐにお風呂に入れるように準備をしていてくれたり、多大なるサポートをしてくれていました。
ですが、高校1年生のとき、試合本番では思うような結果を出せず、予選で敗退したことがありました。
試合後、応援に来ていた父からは「もっとこうすれば良かった」という指摘の嵐。
父の言葉は正しかったかもしれませんが、当時の私はその指摘を受け止める余裕すらありませんでした。「何も報われなかった。私はなんて弱いんだろう。だめなんだろう」という絶望感に押しつぶされそうだったからです。
そんなとき、母がこう言ってくれました。
「あなたがどれだけ努力してきたか、私は毎日ちゃんと見ていたよ。頑張りが結果に結びつかなかったとしても、それが消えるわけじゃないんだから。頑張ったじゃない。」
母の言葉は、私にとって救いそのものでした。結果を出せなかった自分を責めていた心が少しずつほどけ、「努力をしてきたことを見ていてくれたんだな」と思えたことで次の一歩を踏み出せるようになりました。
感情を否定せず、共感する
親として励ましたい気持ちは痛いほど分かります。「次があるよ」「また頑張ればいいじゃない」と声をかけたくなることもあるでしょう。
でも、落ち込んでいる子供にとって、こうした言葉は時に逆効果になることも。
子供は「親に分かってもらえなかった」と感じ、さらに孤独感を深めてしまうことがあるのです。だからこそ、まずは子供の感情に共感し、「本当に悔しかったね」「努力してきたからこそ辛いよね」と、その気持ちを言葉にしてあげることが重要です。
共感の言葉をかけられると、子供は自分の感情を否定されることなく、「分かってくれる人がいる」と安心することができます。この安心感こそ、子供が次に進むための大きな力になります。
努力を認めることが未来への希望に繋がる
結果が出ないとき、人は自分の努力を無駄だと思いがちです。しかし、親として子供がこれまで積み重ねてきた努力を認めることで、その頑張りが「未来への力」だと気づかせてあげられます。
私の母がしてくれたように、「結果がどうであれ、あなたがしてきた努力は本当に素晴らしい」「その頑張りがきっとどこかで活きてくる」と伝えることで、子供は自分の行動を肯定できるようになります。この「頑張って良かった」という感覚は、次の挑戦へとつながる原動力となるでしょう。
落ち着いたら前向きな話題を少しずつ
落ち込んでいる子供が少し感情を整理できてきたら、次の一歩を考えるサポートをしてあげましょう。ただし、焦らないことが大切です。親が「早く元気になってほしい」と急かしてしまうと、かえってプレッシャーになりかねません。
子供の心が落ち着くまで寄り添い、その後で少しずつ未来の話をしていきましょう。「次はどんな風に挑戦しようか?」「今回の経験から学んだことを活かしてみよう」と、未来への道を示してあげることで、子供自身が次に進む力を持てるようになります。
まとめ:親の役割は「寄り添い、支える」こと
子供が落ち込んでいるとき、私たち親にできることは「その感情を受け入れること」「努力を認めること」「未来に向けて支えること」の3つです。
失敗や挫折を経験することは決して悪いことではありません。それを乗り越える力を育むためには、親の温かいサポートが欠かせません。
落ち込んでいる子供に寄り添いながら、その成長を見守るのは親にとっても学びの時間です。ぜひ、子供の悔しさに寄り添いながら一緒に乗り越えていきましょう。